交通事故の「高次脳機能障害」について
「交通事故に遭って高次脳機能障害になり、日常生活や仕事にいろいろ支障が出て、困っている」
「被害者の家族だけど、交通事故後、本人の様子が変わってしまい、対応に困っている」
「相手の保険会社の提案している慰謝料が妥当かどうかわからない、低すぎる気がして納得できない」
「高次脳機能障害で、適切に後遺障害認定を受けるには、どうしたらいいの?」
交通事故後ご自身やご家族が高次脳機能障害になり、お困りの際にはお気軽に弁護士までご相談下さい。
1.交通事故の「高次脳機能障害」とは
交通事故で、頭部に外傷を負ったケースなどでは「高次脳機能障害」になってしまうケースがあります。
高次脳機能障害とは、脳の認知機能の障害です。
認知機能とは、物事を記憶したり集中して取り組んだり、見たり聞いたりしたことを認識したり感じたりする機能です。
認知機能が低下したり失われたりする症状の代表は「認知症」なので、高次脳機能障害になると、認知症に似た症状が出ると考えるとわかりやすいです。
ただ、高次脳機能障害は認知症とは異なります。
認知症の場合には症状が進行していく一方ですが、高次脳機能障害は受傷直後の状態がもっとも重く、リハビリによってある程度回復するからです。
ただしリハビリをしても完全に元に戻らず、認知機能が低下したままの状態となって後遺症が残ってしまうケースも多いです。
2.高次脳機能障害の症状
高次脳機能障害の代表的な症状は、以下のようなものです。
- 記憶障害
物事を新しく覚えることができなくなったり、過去にあった出来事を忘れてしまったりします。
約束の時間や納期などを忘れるので仕事にも支障がでますし、周囲から「いい加減な人」と思われてしまうこともあります。
- 集中力の低下
物事に集中して取り組むことが難しくなります。1つの作業を継続的にできないので、仕事に支障が発生します。
- 2つ以上のことを同時にできない
2つ以上の物事を同時に進行することが難しくなるため、複雑な仕事はできなくなってしまう方が多いです。
- 計画を立てたり実行したりできない
計画を立てたり、人から渡された計画通りに実行したりすることが難しくなります。
- 性格の変化
交通事故前と比べて突然怒りっぽくなったり暴れるようになったり自己中心的な性格になったりして、家族や周囲の人が困惑することが多いです。
また、無気力になったり、さまざまなことに対して無反応になってしまったりする方もおられます。
- 当たり前の動作をできない
ボタンを留める、食事をするなど、これまで当たり前にできていた動作をできなくなる例もあります。
- 見たり聞いたりしたことを理解できない
物事を見たり聞いたりしても、理解できなくなることがあります。
- 言葉で意思を表現できない
自分の意思や言いたいこと、感じていることなどを言葉で表現することができなくなります。
- 病識がない
高次脳機能障害になると、上記のようなさまざまな症状が現れますが、本人は無自覚なことが圧倒的に多いです。
周囲としても、本人の変化が交通事故後の後遺症であることに気づかないケースもありますし、気づいたとしても、本人がリハビリなどの治療を強固に拒絶するので、家族が困る事例もみられます。
3.高次脳機能障害の3要件
高次脳機能障害となった場合、交通事故の後遺障害として認定される可能性があります。
後遺障害認定を受けると、認定された「等級」に応じた後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の支払いを受けられるので、交通事故の賠償金が大きくアップします。
高次脳機能障害として認定を受けるには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 頭部外傷などの診断名がついていること
医師の診断により、高次脳機能障害を引き起こす可能性のある傷病名がついていることが必要です。
具体的には、以下のような傷病名です。
- 脳挫傷
- 急性硬膜外血腫
- 急性硬膜下血腫
- びまん性軸索損傷
- びまん性脳損傷
- 外傷性くも膜下出血
- 外傷性脳室出血
- 低酸素脳症
- 一定の意識障害が継続したこと
交通事故後、一定の意識障害が継続したことが必要です。
事故直後から6時間以上の強度の意識障害が発生した場合か、事故後1週間以上健忘状態が続いた場合に「意識障害」の要件を満たします。
- 高次脳機能障害に典型的な精神症状が出ていること
事故による受傷後、暴力的になったり忘れっぽくなったり日常生活に必要な動作をできなくなったりなど、脳の認知機能の低下によって発生する典型的な精神症状が出ていることが必要です。
以上の3要件を満たす場合に「高次脳機能障害」として認められ、後遺障害として認定される可能性が出てきます。
4.高次脳機能障害の立証方法
高次脳機能障害を発症していることを立証するためには、以下のような資料が必要です。
- 脳外傷について
診断書、MRIやCTなどの画像記録など
- 意識障害について
医師による「頭部外傷後の意識障害に関する医学的所見」、救急記録、家族による看護日誌など
- 高次脳機能障害に典型的な精神症状について
日常生活状況報告書、神経系統の障害に関する医学的所見など
5.高次脳機能障害で認定される後遺障害の等級と請求できる賠償金
交通事故で高次脳機能障害になったことを証明できると、症状の程度に応じて後遺障害の「等級」がつけられます。
5-1.高次脳機能障害の後遺障害等級と慰謝料
高次脳機能障害で認定される可能性のある等級と後遺障害慰謝料の金額は、以下の通りです。
- 1級 2800万円
- 2級 2370万円
- 3級 1990万円
- 5級 1400万円
- 7級 1000万円
- 9級 690万円
ただし、上記の後遺障害慰謝料の金額は「弁護士基準」で計算したものです。
被害者がご自身で任意保険会社と示談交渉をすると、低額な任意保険独自の基準で計算されるため、上記より慰謝料が大きく下がります(2分の1~3分の1程度になります)。
5-2.後遺障害逸失利益
有職者が高次脳機能障害になった場合には、後遺障害逸失利益も請求できます。
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことで労働能力が低下するために発生する将来の減収です。
認定される等級が上がるほど労働能力喪失率が上がるので、後遺障害逸失利益の金額も高額になります。
1級~3級の場合、労働能力喪失率が100%と評価されるので逸失利益は非常に高額になり、1億円を超える事例もみられます。
5-3.将来介護費用
高次脳機能障害で介護が必要な状態になったら、生涯にわたる介護費用も請求できます。
6.高次脳機能障害になったときの対応のポイント
6-1.受診する医療機関について
高次脳機能障害は、医学的にも研究途上の段階であり、専門的に対応してもらえる病院が限られています。
こちらの国立リハビリテーションセンターの情報をもとに、お近くの適切な相談機関、医療機関をあたりましょう。
6-2.事故当初からの対応が重要
高次脳機能障害となった場合、事故当初から適切な対応をとらないと、立証が困難になるケースもあります。
たとえばびまん性軸索損傷によって高次脳機能障害になった場合、立証のために事故直後からの症状の経過が重要となります。事故当時にMRIを撮影しておかないと、後になって症状を証明しようとしても不可能になりやすいです。
6-3.本人が無自覚なので、周囲が気づく必要がある
高次脳機能障害では、本人に自覚がないため、軽度な場合には「性格の変化」「ストレスが溜まっている」などとして見過ごされることが多いです。
本当は高次脳機能障害の後遺障害なのに、「ストレス」「個性」「性格」などとして片付けられるので、本人も家族も苦しむ例が多々あります。
交通事故後、本人の様子がおかしいと感じたら、家族の立場から高次脳機能障害を疑ってみましょう。
7.高次脳機能障害になったら、弁護士までご相談下さい
高次脳機能障害となった場合、上記のようなさまざまな困難が発生するので、専門家による適切な対応が重要です。
当事務所は三重県四日市市の地元に密着した法律事務所であり、地元の皆様の抱えるさまざまな法律トラブル解決に取り組んでおり、中でも高次脳機能障害を始めとする交通事故脳障害の被害者様のサポート実績が高いです。
高次脳機能障害の交通事故の解決には、時間と根気を要します。交通事故直後に受任した場合などには、リハビリだけでも2年近くかかることも珍しくありませんが、被害者やご家族様との間で信頼関係を築き、最後まで走りきってお助けすることに、弁護士としての大きなやりがいを感じています。
三重県周辺で高次脳機能障害になってお困りの場合、大洋総合法律事務所までご相談下さい。